ピロリ菌発見の歴史
ピロリ菌の歴史
- 胃は食べ物を消化するために強い酸性の胃液を出しています。そんな環境に住める細菌などあるはずがないという考え方が長い間伝統的にありました。
1979年、オーストラリアのロイヤル・パース病院の病理専門医ウォーレンが、胃炎をおこしている胃粘膜にらせん菌が存在していることを発見しました。ウォーレンは同じ病院に研修医のマーシャルと共に研究をすすめ、この菌が「胃に住みついている」ということを確信し、この菌によって胃炎がおこると考えました。
ここで、細菌学の父といわれるコッホの提唱した「コッホの四原則」によるとある細菌がある病気の原因であると決定するためには
- その病気のすべての患者にその細菌がいる
- その細菌は他の病気の患者にはみられない
- 患者から分離したその細菌を投与すると別の個体に同じ病態が現れる
- 病気を引き起こした別の個体から、同じ細菌が証明できる
というものです。
このため、ウォーレンとマーシャルはこのらせん菌を分離・培養しなければなりませんでしたがなかなかうまく培養できません。
幸運が訪れたのは培養中にイースター(復活祭)の休日が入り、培養器に5日間いれたままにしてしまった35番目の検体でした。なんと、直径1mmの透明な菌の固まりができていたのです。1982年4月14日です。(実はピロリ菌の培養には最低4日かかります)
培養に成功した菌は、これまでに見たこともない新しい菌であることがわかり、1983年に発表され、世界中の注目を集めました。
さらに1984年7月、マーシャルは培養したこのらせん菌の固まりを自ら飲み込むという人体実験を行いました。10日目に胃の組織を取って調べると、急性胃炎を起こしており、そこにはあのらせん菌が存在していました。これでコッホの4原則が立証されたのです。